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カテゴリ:トゥバ日記( 10 )

シベリアを経由して気付いたアイヌ文化の魅力

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このブログは「トゥバ日記」なんですが、最近アイヌ関係のイベントに顔を出したり、手伝ったりする機会が重なり、今回ちょうどいい機会だと思ったので個人的な話ではありますが、シベリア・トゥバの演奏家である僕がどうやってアイヌ文化に関心を持ち、魅了されていったかについて少し書かせていただきたいと思います。

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もともと僕はトゥバに毎年通い始める以前から、いち音楽ファンとしてOKIさんや安東ウメ子さんのCDを良く聞いていました。その後、2010年の夏から毎年3ヶ月トゥバに通うようになり、現地でトゥバ人以外にも、アルタイ、ハカス、ショルと言った周辺の南シベリア諸民族の人々と交流をもつようになります。そしてフェスティバルなどではサハ、ネネツ、エウェンキ、ドルガンといったより北方の人々も目にするようになりました。現地では、学者などからアイヌの人々について質問を受けることもありました。そんな経験を重ねていくうちに、年々アイヌの人たちの存在が気になってくるようになりました。

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トゥバに行く際にはお土産でよくムックリ(鈴木紀美代さん作)を持参していた。トゥバではクルズン・ホムスというムックリに良く似た竹製の口琴がある。写真は口琴職人のトゥバ人オレグさん。ムックリをプレゼントしたところとても喜んでくれた


 シベリアに通い始めた当初はあまりアイヌ文化に関する知識もなかったですし(今でもそんなに無いですが)、なんとなく民族衣装の模様が似てるなとか、口琴や楽器、木工の文化に近いものがあるな、とかそんなことを感じる程度でした。そのうちシベリアから日本に帰国した後、都内で開催されるアイヌ文化フェスティバルやアイヌ感謝祭、中野駅前のチャランケ祭りなどの催しを見に行くようになります。カピウ&アパッポのお2人と知り合うのはそんな頃です。ちょうど2人で活動をはじめた間もない頃で、やはり口琴関係の催しを通して知り合い、茶箱(もともとアイヌ料理店レラ・チセがあった場所)での東京初ライブも見に行きました。

そうするうちにアイヌ関係の本を読み始めるようになりました。
いくつか読むうちに、知里幸恵さんの『アイヌ神謡集』 を手にすることになります。

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美しい序文であまりにも有名なこの本は、左ページがアイヌ語のローマ字表記、右ページは日本語という体裁になっています。この作品に深く感動するとともに、僕はもうひとつ別の印象を持ちました。「これは僕がトゥバを通して知っている口承文芸の世界と同じだ」と思ったのです。

もちろん、アイヌ語は言語学上は孤立語に分類されていますし、テュルク系の言語と系統関係があるわけではありません。僕は学者でもないですし、安易に比較検討したいわけでも無いのです。

ただ、どうしてもそれが、僕が知っているトゥバの四行詩や民話、その他当時少し読むようになっていたテュルクやツングース等のシベリア諸民族の人々のあいだに伝承されてきた口承文芸、及びそれを取り巻く世界像と繋がりがあるような気がしてならなかったのです。

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ですがその後、言語学者の中川裕先生の「アイヌの物語世界」を読み、それは確信のようなものに変わりました。もちろん詩の形式など違います。ただ、たくさん共通する部分があることも判りました。アイヌの英雄叙事詩では主人公が超人のように空を飛びまわり戦い、体を引き裂かれても復活する。それはサハ民族の英雄叙事詩オロンホを彷彿させるものでしたし、何日もかけて語り手が語り続ける、ある種当時の娯楽であっただろう事などはシベリア、及び中央ユーラシアに広く見られる英雄叙事詩と基本的には同じであることが判りました。

その後、萱野茂さん等が収集、記録されたアイヌの昔話なども読み始めるのですが、読んでいくうちに良い意味で裏切られていくような感覚がありました。というのも、今から思うと当時の自分の中にはアイヌと言うと「自然との共生」とか、「支配者がいない」といったような、ある種理想化したイメージを持っていたように思います。しかし様々な物語を読んでいると、主人公は自らの欲のために悪さをして懲らしめられたり、夫婦関係の問題で頭を悩ませたり、血なまぐさい戦争だってやっている。現代に生きている私たちと何ら変わらない、同じ人間であるといった感触を、強く抱くようになったのです。
また最近では、瀬川 拓郎さんがよりグローバルな視点から、交易民としての、海洋民としてのアイヌをダイナミックに描いた著作を何作か発表しており、大変興味深く読んでいます。

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フェスティバル「ミル・シビリ(シベリアの世界)」2016年筆者撮影。シベリアでは、本当にたくさんのアジア系の先住民の人々が今でもロシア人と一緒に暮らしている。彼らは、基本的にアイヌの人々のことを知っている

そのほかにも、まだまだ気になることは沢山あります。
トゥバの文化を学んでいる僕にとっては、アイヌの人々が儀礼の際に使用するイナウはどうしてもオバーに見えてしまうし、イクパスイはトス・カラックに見えてしまいます。熊を大切な動物として捉えるなど本当に共通することが多く、僕ももっとトゥバの資料を読まなければなりません。

アイヌ語には、固有の文字が無かったことで知られています。トゥバや旧ソ連圏の多くのシベリア諸民族も、1930年代~40年代まで文字を持たない人たちでした。テュルクの人々も突厥文字などはあったにせよ、多くの人々は近代まで積極的に文字を採用してこなかったと思います。

こういった人々は、文字を積極的に採用しなかったために(知らなかった訳はない)近代国家の成立の際に遅れをとってしまったというところはあるでしょう。しかし、文字を持たなかった人々は優れた記憶力を持っていたというのは有名な話ですし、何よりだからこそ、これほど豊穣な口承文芸の世界を築きあげてきました。その人たちが育んできたその精神文化に、僕は魅了され続けています。それらの中には、私たち現代人のこころの深い部分に響いてくる、大切な何かが宿っている気がしてならないのです。

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いちばん上の写真は、シベリアの都市、ハバロフスク在住のロシア人画家パヴリーシン(ロシア人民芸術家)が描いたアイヌの少女。パヴリーシンはナナイやウデヘなど、沿海州に暮らすシベリア諸民族を描いた多くの作品を残しているが、その中にはアイヌを描いたものもある。日本版の絵本「デルス・ウザラー」のイラストも担当している。
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by teradaryohei | 2016-11-13 21:57 | トゥバ日記 | Comments(0)

2016 帰国しました

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エキー!(トゥバ語でこんにちは!)

皆様ご無沙汰しておりますお元気でしょうか?
僕は先週トゥバから帰国し、荷物の片付けや雑務に追われていたところです。

今年も様々な人たちにお世話になり、大変充実した滞在をすごすことが出来ました。

毎年3ヶ月程度の夏の滞在も今年で7年目になり、友達の子供とかしばらく見ないうちに本当に大きくなっていて驚いたり、同世代の知人も責任の有る役職につきトゥバを盛り上げるために頑張っているのを見たりして、なかなかに時間の流れを感じます。それと同時に「リョーヘイは夏になれば毎年いる」のが当たり前になってきているので良くも悪くも珍しくなく、滅茶苦茶に連れ回されること(これは彼ら流のもてなしだったりする)が減ってきたのは落ち着けて嬉しくもありちょっと寂しい所でもあります。

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さて、今年の個人的な反省は、ちょっとトゥバ語が勉強不足だったことです。
というか日本での学習がロシア語中心になってしまい、以前に比べてロシア語が理解できるようになってきたので相対的にロシア語で話す機会が増え、トゥバ語でやり取りする機会が落ちて、中途半端なチャンポンになってしまっていました。

しかし難しいところで、都市部に住むトゥバ人はロシア語を母語のように話す人は多く、一度の会話に中でもトゥバ語とロシア語を頻繁に切り替えながら話すことも多い。むしろチャンポンがデフォルトと言っていいくらいです。トゥバ語も動詞だけロシア語を使用したりトゥバ語の中にロシア語が混ざってしまう状況が問題視されており、僕も「こうやって言語が薄くなっていくのか」と最近身をもって感じています。

トゥバはロシア連邦の中でも高い母語の保有率を誇りますが、それでも若年層を中心にロシア語化は進んでいますし、古いトゥバ語、難しいトゥバ語を知らない人は増えていて統計では現れないところで、前述のように「薄く」なってしまっています。

ただ、正直ロシア語が出来なければあらゆる情報にアクセスできません。多くの書籍やインターネット上の情報はロシア語で、将来の教育を考えるとトゥバ人の親御さんもお子さんにロシア語を勉強させる状況は仕方が無く、非常に難しい問題だと感じます。

 僕自身は、トゥバ語を多少話す外国人です。トゥバ語を話せないトゥバの若者たちに出会う機会が結構ありますが、驚かれます。そして普段ロシア語しか話さない若者も、がんばってトゥバ語で話し始めたりするケースを何度も真にあたりにしました。僕は別に学者ではなくただのミュージシャンですが、外国人である自分がトゥバ語を勉強することは影響力が大きく、それだけで彼らの力になれる部分もあるのではないかという気がしています。
 とはいえ、トゥバ語の教材は非常に少ないため独学が難しく、ロシア語が出来れば非常に便利で様々な情報にアクセスできるので非常に悩ましいところです。・・・まあ自分の選んだ道だし音楽やりながらも楽しみながら、地道に語学はやっていくしかないかなと、最近改めてそんなことを思っている次第です。

上の写真は友達の楽器職人の家で、彼の子供と一緒に。フレットつきのドシプルールを、魚の皮で作ってもらいました。
下の写真はトゥバクズのメンバーと。今年はトゥバ人民共和国設立から数えて95周年でフェスティバルがありました。
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by teradaryohei | 2016-09-21 01:03 | トゥバ日記 | Comments(1)

2015帰国しました

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エキー!(トゥバ語でこんにちは!) 
ブログには久々の投稿です。

今年も6月~8月末までトゥバに滞在してきました。今年は例年より短めでしたが実り多い滞在となりました。

 毎年3ヶ月トゥバに通うようになって今年で6年目になります。

 同世代のミュージシャンも責任ある役職につき、トゥバの音楽文化の中で中核を担うようになったり、まだあどけない子供だった知人が立派な青年歌手に成長したりして、それなりに時間の流れを感じます。

 一方で僕自分に目を向けると、改めて学ぶことの多さ、自分の未熟さに呆然とします。そして日本で十分に活動しているともまだまだ言えません。日本でも自分に出来ることをひとつひとつ積み上げて行きたいところです。

 と、まあそんな感じなので今後とも何かと、ご協力よろしくお願いします。
 僕の活動に関心を持っていただける方、是非気軽に声をかけていただければ嬉しいです。
 そして是非一度コンサートやイベントに遊びに来てみてください。

 
 写真はトゥバ西部のタイガ、マンチュレックに滞在したときのもの。
 トゥバの伝統的なお酒「アラガ」を造っています。

 


★最近ブログの投稿が滞りがちでフェイスブックの方がマメに更新しています。
 もしよろしければこちらから僕のページもチェックしてみてください。
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by teradaryohei | 2015-08-29 16:13 | トゥバ日記 | Comments(0)

イスラムアート紀行 インタビュー

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今更という感じなんですが・・・今までプロフィール欄にリンクを張っていたので、読んでる方は読んでると思うんですが、これ1年位前に僕がイスラムアート紀行から受けたインタビューです。とても良い記事なので是非読んでみて下さい。本人としてはちょっと気恥ずかしいところもあるんですが、この時答えた事は基本的に今も考えは変わっていません。トゥバの雰囲気が伝わるし、企画している中央アジアコンサートについても触れて頂いています。未読の方は是非。
http://orientlib.exblog.jp/21662505/
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by teradaryohei | 2015-03-05 21:53 | トゥバ日記 | Comments(0)

2013 帰国しました

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お久しぶりです。一昨日トゥバから帰国しました。

今年はかなりいろんな事がありました。
3ヶ月間の主なトピックはこんなところです。

6/13-16 第6回国際ホーメイシンポジウム参加(ソロ部門で"За артстизм"(名人芸)賞受賞)
6/20-21  テレ・ホル滞在
6/27-30 ハカス共和国アバカンにて フェスティバル「トゥン・パイラム」参加
7/5-6  チャー・ホル滞在 知人のホーメイジのコンサートに参加
7/13-14 クラスノヤルスク州シューシェンスコエにてフェスティバル「ミル・シビリ」に参加
7/17-21 トゥバ共和国のフェスティバル「ウストゥ-・フレ-」参加
7/25  トゥバを代表するホーメイジであったコンガルオール・オンダール死去
8/3-4  カーヘム・タイガ滞在
8/9-12  トジュ地方アザス湖滞在
8/14-16 クズルにてハマグ・モンゴルコンサート

6月上旬の第6回国際ホーメイシンポジウムでは、アメリカ、フィンランド、中国、日本、バシコルトスタンなど世界各地から参加者が集まり、、コンクール部門には139の参加者がパフォーマンスを行いました。今年の総合グランプリは僕の師匠であるチルギルチンのモングンオール・オンダール。僕はソロ部門で光栄にも"За артстизм"(名人芸)という賞を受賞しました。(賞金まで貰いました!)このことはまた追って報告しようと思います。

また今年の大きなトピックとして、コンガルオール・オンダール氏が死去したことが挙げられるでしょう。
彼はホバルグ・カイガルオールと並ぶ、世界的に知られた優れたホーメイジであり、トゥバの喉歌のシンボルのような存在でした。彼のことは近いうちにまとめて記事を書こうと思っています。


今年でトゥバへの3ヶ月滞在も4回目となり、これで通算1年間トゥバに住んだことになります。
現地での知り合いもずいぶんと増え、かなりいろいろな場所へ連れて行ってもらいました。
またそれに伴い、音楽関係以外にも舞台関係者や作家、学術関係者、ジャーナリストなどトゥバの知識階層の人たちと交流する機会が増えてきました。彼らの日本の芸術文化に対する質問は非常に鋭く、多くのことを気づかされ、自分がいかに母国である日本について知らないかを思い知らされます。

そして、トゥバのミュージシャン達とも、ずいぶん仲良くなりました。
いろんな場所に連れまわされ、一緒に酒を飲み、一緒に演奏したり歌ったりと、たくさんの充実した時間を過ごしました。
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左からカルムイク共和国のシャラエフ・ディーマ、アラッシュのバドゥ・ドルジュ・オンダ-ル、アヤン・シリジク、アヤン・オール・サム、僕、トゥバ・ナショナルオーケストラのブルタンオール・アイドゥン

初めてトゥバに訪れたときはトゥバ語もロシア語もほとんどわからず、コミュニケーションもほとんど取れない状態で友達もあまり作れませんでした。でも、今では多くの友人たちがまるで古くからの地元の仲間のように、僕のことを受け入れてくれている様に感じます。
 彼らは優れた一流のミュージシャン達です。僕は今年は権威あるコンクールで受賞できたとは言え、やはりトップクラスのミュージシャンの演奏と比べると自分はまだまだ赤子だなと思います。
だけど、「リョーヘイは結構がんばってるね」と、ある程度は認めてくれるようになったかな、と最近は少しは感じるようになりました。

僕も少なからずトゥバに関わってきました。彼らに対して恥ずかしくないよう、一人の日本人のミュージシャンとして演奏活動をし、トゥバの魅力を伝える報告活動も行って行きたいと思っています。

変な言い方かもしれませんが、僕の活動を、是非応援してください。
今年の活動報告とコンサートは、定期的に行って行くつもりです。気が向いたときに遊びに来て頂ければ、それで十分です。演奏に呼んでいただければこれ以上の喜びはありません。

僕の演奏や話を通してトゥバの魅力に気づく人が多少でも増えれば、トゥバの友人たちにも世話になった恩を多少は返せるのかなと思います。今の自分にはそれくらいしか出来ませんが、微力ながらもそんな役割が担えればいいかなと思っています。


一番上の写真はホーメイシンポジウムの授賞式にて。
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by teradaryohei | 2013-08-30 23:01 | トゥバ日記 | Comments(0)

モスクワでのコンサート「日本の心」での演奏について

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さて、渡航前に昨年9月に出演したモスクワ音楽院でのフェスティバル「ДУША ЯПОНИИ(日本の心)」について書いておきたいと思います。

モスクワのチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院・コンセルバトワールといえば、数多くの作曲家や世界的な演奏家を輩出した、世界三大音楽院のひとつ。
「何でお前ごときがそんなすごい場所で」と言う声が聞こえてきそうですが、もちろん別に僕がそんなにすごいわけではなく、これには色々といきさつがあります。

簡単に言うと、コンセルバトワールの民族音楽研究室のスタッフに、知り合いがいるんです。
ベラルーシ人の彼は喉歌のファンで一時期トゥバの音楽学校に留学していたこともあり、トゥバの音楽フェスティバルなどでも裏方として働いていました。そんな経緯があり僕も知り合いになったのです。
彼は日本の音楽にも非常に詳しく、またかなりの口琴マニアでもあります。(なので江戸時代日本で口琴が流行したが徳川幕府に禁止された、など熱く語ったりする)

コンサートが行われたそのさらに1年前、2011年にトゥバを訪れた際はモスクワを経由したので、その際彼の職場であるコンセルバトワールの民族音楽研究室を訪れ、教授であるマルガリータ先生を紹介してもらいました。
コンセルバトワールの民族音楽研究室は、マルガリータ先生自身が琴や三味線の演奏家でもあることもあり、日本の邦楽にかなり力を入れて研究、日本からも演奏者を招いての講座なども活発に行っており、毎年9月~12月にかけて「日本の心」という日本の伝統音楽の連続コンサートを開催しています。
その時は僕を含めた3人で研究室を訪れたのですが、その際いろいろとお話させていただいたり、僕も研究室にあるイギルを弾いて聞かせたり、日本の民謡を一節歌って見せたりしてほんの少し交流させていただいたのでした。
そんなトゥバの喉歌なんかをやっている変わった日本人たちがいることを面白いと思ってくれたのかもしれません。ベラルーシ人の友人の後押しもあったのでしょう、2012年の「日本の心」にちょっと出演してみたら?と言う打診がその年の冬にあったのでした。

はて、「日本の心」といえば本格的なモスクワの邦楽フェスティバル。日本の尺八や琴の大御所の方々が何度も出演しているコンサートなので、僕らは「ちょっと変わった日本人枠」みたいな感じで端っこのほうで軽く出演させてもらう、という感じだろうなと思っていました。

このコンサートに関わる一連の流れについては、ロシア語が非常に堪能で、トゥバに関しては僕の先輩であるとある方(2011年も一緒にモスクワを訪れた)が中心となって話を進めてくれたのですが、なんだか話が進むにつれどうも本格的なコンサートを組んでくれるらしい、ということがわかってきました。
そんなこんなで、日本のトゥバ関係の知人に何人か声をかけて、僕を含めた日本人4人が最終的にコンセルバトワールの、ラフマニノフホールという凄すぎる舞台に立つことになったのです。

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コンセルバトワールの入り口に張り出されたコンサートのポスター。いろいろ経緯があってポスターの写真は僕だけになっている。僕らのコンサートのタイトルはズバリ「”Неожиданная Япония”(思いがけない日本)!」

コンサート当日僕たちはトゥバの音楽を演奏し、友人の一人は彼が取り組んでいるキルギスの音楽も演奏しました。

日本の心のコンサートは、2012年のトゥバの滞在を終えた帰りにモスクワに立ち寄り、日本に帰国する前に参加しました。そのときの僕はトゥバでの長期滞在を終え、最高の先生からトゥバ音楽の手ほどきを受け、トゥバの音楽フェスなどの大舞台を経験、ある程度自信をつけていました。それでも、コンサートが開幕し、(僕はトップバッターで、コンサートの最初と最後に演奏した)お客さんの前に立つまでは緊張で震えました。しかし最初の曲を演奏し、聴衆の皆さんからたくさんの拍手を頂いたときの感動は忘れることが出来ません。


僕のコンセルバトワールでの演奏の一部

一応「日本の心」なのでやはり日本の曲も演奏したほうがいいだろうと僕は考えていたので、最初にトゥバの伝統曲を数曲演奏、2度目の出番のときに和服に着替えてトゥバの楽器で日本の曲を数曲演奏しました。
これは僕にとっても非常に難しいチャレンジだったのですがとても勉強になり、マルガリータ先生をはじめ聴衆のみなさんにも、ある程度関心を持って見て頂けたのではないかと思っています。

聴衆と言えばコンサートを通して感じたのはその質の高さでした。なんせ世界最高峰のクラシック音楽のコンサートに日ごろから通い、日本の伝統音楽にも関心を示している、非常に教養の高い音楽ファンの皆さんです。ロシアに通じている方なら判るでしょう。ロシア文化人の教養は非常に高いのです。

聴衆の方の、その空気から感じたのは、この人たちは本当に真剣に自分の演奏に耳を傾けてくれている、ということでした。
 トゥバの音楽は、やはり喉歌にインパクトがあります。それだけでもかなり珍しいものなので、やはり演奏すればある程度の反応が期待できるとも、正直思います。しかしコンサート終了後、あるお客さんからこんなコンサートの感想を頂きました。

 「あの歌は精神の内面の美しさを表現している。」

やはり、こういった感想は音楽に対する深い造詣の念が無ければ出てこないものだと感じました。

そしてこのコンサートではまた別の収穫がありました。それは日本の邦楽の演奏と研究に取り組むコンセルバトワールの研究生の皆さんと知り合えたことです。僕はロシアの先住民族の音楽を学んでいます。そして彼らは非常に熱心に、日本の伝統音楽に取り組んでいます。外国の伝統音楽を学んでいる、ある種似たもの同士の、同世代の友人が出来たことは僕にとって非常に大きな励みになり、また自分のルーツである日本の伝統音楽に関しても、深く考えさせられるきっかけとなりました。

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日本の尺八オタクのサーシャと。トゥバのショールを吹く日本人と、日本の尺八を吹くロシア人のツーショット!

幸いコンサート終了後もコンセルバトワールの皆さんとは関係が続き、今後も何かしら演奏の機会が続きそうです。僕にとっても非常に大きな財産になったこのコンサートの経験を活かし、まだまだ未熟な腕に精進を重ねていかなければならないなと、この日記を書きながら今新たに思い直しています。

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一番上の写真は、ラフマニノフホールでのリハーサル風景。コンサート中の写真は残念ながらありません。
コンサートには僕を含めた友人たちと4名で出演しました。写真などもいくつかあるのですが名前や顔写真などでネットにアップしていいのかどうか計りかねたのでとりあえずこのような形で日記をまとめてみました。
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by teradaryohei | 2013-05-25 23:32 | トゥバ日記 | Comments(0)

フンフルトゥ・イン・チャダーナ 2012

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皆さんご無沙汰しております。

僕は6/14~9/10まで今年もトゥバに3ヶ月滞在しており、毎日充実した日々を過ごしています。

フンフルトゥの来日公演は行かれた方も多かったのではないでしょうか。僕も知人から感動したとの声を多数聞いています。トゥバの音楽の魅力が多くの日本の人たちにも伝わったはずで、素晴らしいことです。

ところで、来日公演時にもしかしたら説明があったかもしれませんが、フンフルトゥってどういう意味かご存知ですか?

僕も最近まで勘違いしていたのですが、トゥバ語で フンフルトゥ / ХҮН ХҮРТҮ とは

ХҮН / 太陽 、 日

ХҮРТҮ / プロペラ

直訳すると「太陽のプロペラ」です。これはどういう状態なのでしょう。


フンフルトゥ初代メンバーのアレクサンドル・バパはインタビューでこう答えています。

「フンフルトゥとは、朝焼けや夕焼けのときに大草原の空に見られる現象で、光線が縦に幾重にも分離する様子をいうんだよ。トゥバ人は自分たちの住む広々とした大地をフンフルトゥとも呼んでいる。美しい光に対する畏敬の念からそう呼ぶのさ。グループ名にこの言葉を使ったのは、自分たちの音楽がこうした自然の大地に根ざしたものだからなんだ。大草原の空に広がる光線は、ホーメイの声が分離する様子と通じるものがあるからなのさ。ただホーメイのほうは光でなく、音が分離するのだけどね。」


今年トゥバの1都市チャダーナで、きれいなフンフルトゥを見ることができました。確かに、プロペラのような状態になっているでしょう?これは本当に美しい光景です。

トゥバの自然は大変に美しく、その音楽は彼らが暮らす土地の自然に深く根ざしたものであると言えると思います。それはフンフルトゥだけでなく、他の伝統的なアンサンブルやホーメイについても同じだと言えるでしょう。そういったことを想像しながら彼らの音楽を聴くと、また新たな発見があるかもしれません。



★しかしなぜ彼らが1stアルバムを出すときに「Huun-Huur-TU」 と英語表記したのか僕も良く分かりません。(トゥバ人も不思議がってる)なので日本では フ-ン・フール・トゥ という表記が多用されているので混乱することもあるかと思いますが、実際の意味はこういったことなのでした。
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by teradaryohei | 2012-07-29 23:58 | トゥバ日記 | Comments(0)

サンチュ・クズルオール・ユブレイ①

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さて、「トゥバ日記」というタイトルのブログにしてはトゥバでの出来事をあまり書いていないので、少しずつ書いてみることにします。

トゥバの音楽が好きな方なら、「カラ・ドゥルヤー/кара-дуруя」という曲を聴いたことがあるでしょう。
トゥバで非常に親しまれているメロディーのこの曲は、サンチュ・クズルオール・ドンガクビッチ/Санчы Кызыл-оол Донгаквичи(1931-1977) というホーメイジの手によって生まれました。

サンチュ・クズルオールはトゥバ南西部にあるオビュール地区のドゥス・ダグという村で生まれました。昨年の7月にそのドゥス・ダグで彼を記念する小さなフェスティバルがあり、私は参加してきたのでここで数回に分けてレポートしていきたいと思います。

道路の舗装がまだ十分に行き届いていないトゥバでは、地方に向かう場合ある程度ルートが限られてしまいます。今回は首都のクズルから南下し、かつて首都があったサマガルタイの手前で西へ。しばらくするとアルファルトの道はなくなり、デコボコ道を砂埃を上げながら数時間進むことになります。その後途中休憩を含めてクズルから6時間程度でドゥス・ダグ村に到着しました。

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こんな感じの道を延々とすすむ。この程度ならだいぶ道はマシなほう

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途中川で顔を洗う。冷たくて気持ちいい

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休憩所のスタローバヤ(食堂)にて。ボルシとプローフ。トゥバはロシア連邦内でもあるのでボルシは日常的に食べる。プローフはもともとウズベクスタンの料理だがトゥバでもよく食べられている。お茶はお湯にティーバッグと砂糖がぶち込まれるのみ。よくプラスチックのコップで出されるのでコップがお湯の熱で変形した状態で出てくる

ドゥスダグに到着すると今回ドゥスダグ村で何かとお世話してくれた女性の家族(名前は失念)が暖かくもてなしてくれました。
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これで「ちょっとお茶しましょう」の量。こういう場合はめちゃくちゃに食べまくるほうが礼儀正しい

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写真がぼけてますが、子供たちが民族衣装を着てチベット仏教の歓迎のもてなしをしてくれました

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村の中心にはチベット仏教のマ二車

長いので数回に分けます。

最初の写真はサンチュ・クズルオールの肖像画。ギターを持っていますが、過去トゥバではソビエトの民族政策によって伝統的な楽器が制限された時期があり、その影響だと思われます。その時代の写真を見ると、ホーメイジがギターやバラライカを持っていたりします。
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by teradaryohei | 2012-01-22 23:32 | トゥバ日記 | Comments(0)

帰国しました

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一昨日帰国しました。

今年はトゥバ語、ロシア語とも幾分か上達したおかげで、たくさんのトゥバの友達が出来、たくさんのホーメイジと交流してきました。

また今年はドゥスダグ、ハンダガイテといったオビュール地区や、バルーンヘムチクなどトゥバ西部へ多く訪れてきました。

トゥバ各地で多数演奏活動も行ってきたので追ってこの日記でお知らせしていきます。


写真は8月中盤、ナーダム(トゥバの夏祭り)にて、トゥバのスーパースター達と。

(左上からフンフルトゥのサヤン・バパ、トゥバ・ナショナルオーケストラのアイハーン・オールジャック、一人置いてHHTのアレクセイ・サルグラー、アンドレイ・モングッシュ、HHTのカイガルオール・ホバルグ、私、アラッシュアンサンブルのバドゥ・ドルジュ・オンダール、チルギルチンのイゴール・コシュケンディ)
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by teradaryohei | 2011-09-10 22:08 | トゥバ日記 | Comments(2)

2011 トゥバに着きました

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6月12日トゥバ共和国の首都クズルに到着しました。

今年も3ヶ月滞在予定です。

今年のトゥバは暑い。日差しが厳しいです。

これから少しずつ情報をアップしていきます。

写真はアジア中心の碑にて、近くにいたトゥバの女の子と。
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by teradaryohei | 2011-07-05 01:01 | トゥバ日記 | Comments(0)


トゥバ音楽演奏家の寺田亮平のブログ。ロシア連邦トゥバ共和国の現地情報、社会、文化、ミュージシャンなど紹介します     dtxmain[at]gmail.com


by teradaryohei

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