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カテゴリ:シベリア関連( 4 )

北方諸民族の歌と踊り - ② ショル民族の音楽

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トゥバ共和国の北西部にはハカス共和国が隣接していますが、ハカスから西に隣接するケメロヴォ州にはショルと呼ばれる人々が住んでいます。テュルク系のショル語を話し、2010年調査で約13000人という数字があります。

往年のボクシングファンの方なら、ユーリ海老原(勇利アルバチャコフ)を覚えていらっしゃるでしょう。彼はケメロヴォ州の家が7件しかないという集落出身のショル人です。

ショルには、トゥバやアルタイ、ハカスと同じように、喉歌の音楽文化があります。その音楽文化を一身に背負っているといっても過言ではない、代表的な歌手がチュルトゥス・タンナガシェヴァでしょう。



僕はもともとチュルトゥスの大ファンだったのですが2015年にトゥバの友人を介して知り合いになり、現地で同じイベントに出演したこともあります。彼女は複数のテュルク系言語に通じておりトゥバ語でも多少会話することができました。特にトルコ語は上手いらしく大変知的で聡明なミュージシャンです。彼女はテュルク世界ではショルを代表する歌手として幅広い演奏活動を行っています。

しかしショル人自体の人口は少なく、決して演奏家が多いわけではありません。2015年にショルの男性ミュージシャンと知り合いになりましたが、彼はショルではあまり喉歌に人気がないのでトゥバを参考にして広めて行きたいと語っていました。

しかし、最近はショルの音楽文化を継承しようという若者の動きも、少し広がってきているのかもしれません。昨年のミル・シビリではショルの女性のアンサンブル「オット・エネ」を見ることができました。ここでは参加していませんが「オット・エネ」はチュルトゥスもメンバーのはず。メンバーが流動的なのはあちらではよくある話ですが、喉歌を歌っている女性は僕も始めて見たので期待しています。

少し遠くから撮影したので音など良くないですが、YOUTUBEにアップしました。


前述した勇利・アブバチャコフは、来日直後の朝日新聞のインタビューでプロを目指した理由を聞かれ、「民族の栄誉のためだ」と語っています。日本はもとより、ロシアでもショルの人々のことを知っている人は極めて少なく、自分がチャンピオンになれば少しは記憶に留めて貰えると思ったと。(※)

日本の喉歌のファンの間でもまだショルの知名度はトゥバやアルタイ、ハカスに比べても高くは無いと思います。シベリアの文化に関心がある方もショルについて知っている人はそう多くないかもしれません。僕はケメロヴォは通過した程度の滞在経験しかありませんが、ショル語もおそらくほとんど話されなくなっていると思います。

日本においてのショルに関する研究も、等々力政彦さんが何度も調査に訪れていることを知っている程度で、詳しくは僕も知りません。ショル語の研究者とかにも会った事はありません。僕も手元にトゥバで買って来たショルのフォークロアに関する本があるのですが手一杯な状況で読めないままです。シベリアに関心がある若い学生さんなんかが、ショル語の研究とか始めてくれるといいなと思ってるんですが・・・

日本ではまだショルといってもほとんどの方は馴染みが無いでしょうが、彼らの素晴らしい音楽文化を通して、ショルの人々の存在を多くの方に知ってもらえることを願うばかりです。

参考資料 ※日本人の心をつかんだショル人ボクサー 勇利アルバチャコフ/赤坂恒明 

【宣伝コーナー】2/10に西荻窪で私のソロライブと報告会があります。このビデオを撮影したフェスの模様などもお話しますので、関心がある方は是非お越しください。



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by teradaryohei | 2017-01-29 20:31 | シベリア関連 | Comments(0)

北方諸民族の歌と踊り -① ドルガン エネツ エウェンキ ガナサン ネネツ

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2/10に西荻窪の音や金時さんで僕のソロライブと報告会があるので今写真やビデオを整理しているのですが、かなり量があり時間的に見せられないものもたくさんあります。僕のHDで腐らせていても仕方ないかなと思う動画が結構あるので、珍しいものをYOUTUBEに先にアップしました。

この動画はクラスノヤルスク州シューシェンスコエ(レーニンが流刑されていた場所として有名で暮らした家が博物館となっている)で開催された「ミル・シビリ(シベリアの世界)」というフェスティバルで2016年7月に撮影したもので、僕は2012年から見に行っています。音楽と手仕事のフェスでロシア人の比率が高いのですがアジア系の諸民族の参加も多少あり、毎年楽しみにしています。

今年はドルガン、エネツ、エウェンキ、ガナサン、ネネツの人々が参加していて歌や踊りを披露していました。
最初と最後の動画ではドルガンの若者たちの踊り、その他はそれぞれの母語で挨拶し歌を披露してくれています。
エウェンキとネネツ以外は僕も始めて見たので感激でした。

ドルガンの若者たちの踊り。タイミル半島からわざわざ来たそうです。



ドルガン エネツ エウェンキ ガナサン ネネツ それぞれの挨拶と歌が聞けます。





最後は再びドルガンの若者たちの踊り。



今まで7年取りためた、こういった写真や動画が膨大にあり、中には資料として価値があるとものもあるとおもうので、これから機会を見てこういった作業を進めていこうかとおもいます。


ご興味はある方は2/10に音や金時にお越しください。フェスティバルなどのついてもお話できればと思っています。


寺田亮平(トゥバ音楽)
ソロライブ &トゥバ最新レポート

毎年夏の3ヶ月程度トゥバ共和国に滞在している寺田亮平が、写真や映像を交えながら昨年夏のトゥバの模様をレポートします。演奏とレポートの2部構成。トゥバ以外のフェスの模様などもお伝えします。

日時:2月10日 (金) 19:30 ~
会場:音や金時 チャージ2,300円

東京都杉並区西荻北2丁目2−2−14TEL:03-5382-2020   
※予約不要。直接ご来場下さい

フェイスブックのイベントページ



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by teradaryohei | 2017-01-25 18:37 | シベリア関連 | Comments(0)

直川礼緒さんのスゴさを語る

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口琴関係の皆さんにはおなじみ、日本口琴協会代表のの直川礼緒さんですが、口琴という楽器自体が珍しいということもあり、音楽ファンの方でもご存じない方は多いんじゃないかと思います。
直川さんは口琴関係の音楽の現場には良くいらっしゃいますし、大変気さくな方なのですが、最近
「いや、みんな直川さんのスゴさを判ってないよな・・・」
と感じることが多々あるので、今日は「僕が考える直川さんのスゴさ」について書かせてください。

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直川さんの著書「口琴のひびく世界」


直川さんは、口琴という楽器を通じて、「シベリアの音楽をほとんどはじめて、日本でまともに紹介した人」だと僕は思っています。「シベリアの音楽」といってもいわゆるロシア人の民謡やバラライカの演奏などではなく、「ロシア人の移住が始まる前からシベリアに住んでいるアジア系の人たち」の音楽です。

 ワールドミュージックが好きな方でも、シベリアの音楽といわれてもあまりピンと来ないでしょう。
戦後、小泉文夫氏をはじめ多くの方々の尽力により日本にも世界各地の音楽が紹介されるようになり、1980年代にはいわゆる「ワールドミュージックブーム」もありましたが、やはりソビエト連邦内の諸民族の音楽は政治的な問題や言葉の壁もあり、あまり多くは紹介されてこなかったと思います。

 まだ冷戦構造が生きていた時代は西側の外国人がソ連に入国することは難しく、モスクワやペテルブルグに行けたとしても、シベリアに行くことは手続きも煩雑でかなり難しかったはずです。ゴルバチョフが登場してからは外国人にも徐々にその鉄の扉が開かれるようになり、谷本 一之先生ら音楽学者の非常に重要な仕事もありますが、一般の人に沢山の機会を提供したという点において直川さんの功績は非常に大きいと僕は思っています。(というか、直川さんの恩師は小島美子先生なので、実は小泉文夫直系の人とも言える)

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 直川さんが紹介したシベリアの音楽のなかで、代表的なのがサハでしょう。サハ共和国は世界でもっとも口琴が盛んに演奏される土地で、直川さんはまだソ連時代にヤクーツクで開催された第二回国際口琴フェスティバルに参加されたのをきっかけにその後何度も現地に足を運ばれ、サハの口琴演奏家の招聘、コンサートの企画制作、ビデオや音楽CDの制作、日本人を連れての現地ツアーなど積極的な活動を行ってきました。
 現在、世界で最も有名な口琴を演奏する音楽グループといえば「アヤルハーン」だと思いますが、
直川さんはアヤルハーンが結成される以前に中心メンバーであるアリビナ・ジェグチャリョーヴァ氏や、当時まだ若かったオリガ・ポドルージナヤ氏など数人の演奏家を招聘、CDの制作を行い、この時のアリビナとオリガのデュオはアヤルハーンの母体となっています。

 サハ以外にも僕が取り組んでいる南シベリアのトゥバにも1993年の時点で足を踏み入れ、喉歌のシンポジウムの模様をレポートし、トゥバを代表する音楽学者であるゾーヤ・クルグスやバレンチナ・スズケイ氏の論文を翻訳し紹介していますし、トゥバの口琴音楽をまとめた非常に意義深い音楽CDも制作なさっています。

またアルタイ・ハカスのミュージシャン達との親交も深く、招聘活動や音楽CDの制作も行っており、アルトィン・タイガというユニットでご自身で演奏活動も行っています。

それ以外にもナナイ・ウデヘ・ウリチといった沿海州に暮らす諸民族の音楽文化も口琴ジャーナル等でレポートを掲載していますし、国際口琴フェスティバルなどにはアイヌの方とご一緒に参加されることも多いので、実はこういったシベリア諸民族とアイヌの方々が交流するという大変意義深い機会も作っているのです。

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そして日本の口琴文化の復興にも多大な貢献をなさっています。ここ20年で口琴を演奏するミュージシャンは非常に増えましたし、埼玉県で鉄口琴が多数出土されたことなどは直川さんの影響もある気がします。(考古学者が口琴という楽器を知らない場合が結構あるようです)

研究者としては、実際に現地に赴いていることはもちろん、まず目を通されている文献の豊富さが凄いです。ロシア語やテュルク諸語を含めたかなりの文献に目を通されていますので、ちょっとした研究者では太刀打ちできないでしょう。視点も非常にニュートラルだと感じます。

 ただ、直川さんは演奏家としても大変ユニークな方です。口琴という楽器はその民族によって演奏方法が違うので、その演奏方法を知っていることはとても大切なことですが、直川さんは伝統的な演奏はもちろん、新しい表現のアプローチにも非常に貪欲で国際口琴フェスティバルなどでも大変ユニークなパフォーマンスを行っています。ソロアルバムも2枚発表されていますので、是非聞いてみてください。

ちょっと書いているとキリがないのですが、今度6/18(土に)企画している「ユーラシア・トラディショナル・ミュージック2」でも直川さんに演奏していただきますので、ご興味がある方は是非会場で直川さんの演奏をご覧になってください。今回はコンサートの企画の性格上、諸民族によって演奏方法が違う、伝統的な演奏をお願いしていますが、毎月行っている日本口琴協会の定例会など、様々な演奏活動を行っています。また本コンサートでは日本口琴協会が運営を行っているオンラインショップ「びやぼん屋」の出店もお願いしていますので、実際に口琴や珍しいCD,書籍なども会場で購入することが出来ます。
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 僕が2013年にはじめて中央アジアコンサートを企画したときも、その出演者のほとんどは直川さんと関係している人たちでした。僕はある意味その人脈を使わせてもらったわけですが、企画を快く了承してもらったことに今でも大変感謝しています。

 直川さんの魅力に触れるには、まず著書「口琴のひびく世界」をご覧になると良いと思います。
CD付きなので各地の口琴演奏に耳を傾けながら読んでみてください。口琴の魅力に取り付かれること請け合いです。


一番上の写真は、2013年1月に開催された「中央アジアの音楽 vol.1」にて、バシコルトスタンの衣装を着て「ベル付き口琴」を演奏する直川さん。
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by teradaryohei | 2016-06-05 23:17 | シベリア関連諸国 | Comments(0)

シベリア先住民の食卓 食べものから見たシベリア先住民の暮らし

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3月に面白い本が出版されたので紹介しておきます。

「シベリア先住民の食卓 食べものから見たシベリア先住民の暮らし」
永山 ゆかり,長崎 郁編

この本は、サハ、アリュートル、イテリメン、ユカギール、ニブフといった北方諸民族の言語を調査している日本の研究者の方々がその地域に伝わってきた食文化について綴ったエッセイをまとめたものです。

 執筆者の皆さんは言語や口承文芸などを調査されている研究者の方々ですが、この本は学術書ではなく現地にフィールドワークに赴いた際に、その先々で振舞われたり、一緒に作ったりした料理に関する体験談をまとめたもので非常に読みやすい内容です。

 とはいえ料理名の表記などは現地語でちゃんと記述されていますので、言語に関心がある方にももちろん面白い内容だと思いますし、「食」という私たちにとって身近なテーマで書かれていますので、まだ日本人にほとんど知られていることの無いこういった北方諸民族の人々の文化を知る良いきっかけになる一冊だと思います。

 寒さの厳しいシベリアでは一部を除けばほとんどの地域で農業が難しく、伝統的には漁労、植物やベリー類などの狩猟採集、トナカイや馬などの牧畜および乳製品の加工などが行われてきました。

 「シベリア」というと極寒、日本人抑留者の強制労働、など寒くて暗いイメージを持っている方がたくさんいらっしゃると思うのですが、その自然は厳しくも非常に豊かなものであり、その地域で暮らしてきた人々は様々な工夫を凝らして豊かな食文化を発達させてきました。そしてそういった伝統的生業は多かれ少なかれ現在でも彼らの食文化の基本的な部分を支えています。

この本では、南シベリアであるトゥバの食文化についても、新潟大学の江畑冬生先生が紹介されています。
江畑先生はご専門はサハ語ですが、2014年と2015年の夏にトゥバにお越しになり、僕も現地でばったりお会いして、共通の友人がいたこともあり数日間ご一緒させていただきました。トゥバの食文化に関心がある方は、是非ご覧になってください。

 サハ、アリュートル、ユカギールなどと言ってもほとんどの方々は耳にしたことも無いと思います。ただこういった人々が、(ロシア人が移住してくる前から)長くシベリアに暮らしてきた、ということをまず知るきっかけになると良いなと思います。

 そして、サハやトゥバなどロシア連邦内に共和国を持つ一部の例を除けば、その半分以上は人口5000人に満たない少数民族であり、それらの言語が失われつつある、といったことも、出来れば知ってほしいと思うのです。


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関連書籍として、同じような執筆陣で北方諸民族の口承文芸を扱った
「水・雪・氷のフォークロア 北の人々の伝承世界」 (勉誠出版)も読みやすくお勧めです。



 

 
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by teradaryohei | 2016-06-01 15:04 | シベリア関連諸国 | Comments(0)


トゥバ音楽演奏家の寺田亮平のブログ。ロシア連邦トゥバ共和国の現地情報、社会、文化、ミュージシャンなど紹介します     dtxmain[at]gmail.com


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